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機動戦士ガンダムAGE 監督・山口晋、ストーリー/シリーズ構成・日野晃博ロングインタビュー 要約版
月刊ニュータイプ2011年10月号
監督・山口晋、ストーリー/シリーズ構成・日野晃博
ロングインタビュー 要約版
▽監督・山口晋
――「ガンダムAGE」に参加されたきっかけを教えてください。
山口:自分が監督としてかかわったのは「ケロロ軍曹」ですから、娯楽的な方向性の作品をやってきたことを、評価していただいたのかなと思っています。
――ガンダムという作品には、どんな印象をもっていましたか?
山口:ガンダムは興味がない監督がつくったほうがいい……っていう話もありますけど、自分はファーストガンダム(機動戦士ガンダム)世代ですね。中学校のときに再放送で初めて見て、とても影響された作品です。
――参加した段階で、企画はどの程度進んでいましたか?
山口:僕が依頼を受けた段階で、もう日野(晃博)さんの企画はほぼ決まっていて、子供にまで幅を広げるというコンセプトは共感できました。
――日野さんには、どんな印象を抱きましたか?
山口:ガンダムに参加できるっていう喜びと、バイタリティにあふれた人でした。社長さんなのに、子供の願望が大人になったような方ですね。気持ちが強い方で、「じゃあやりましょう!」っていう雰囲気をもっている。
――「AGE」の企画を見たとき、どんな印象でしたか?
山口:「これはおもしろい!」って素直に思いました。ただ3世代っていうアイデアは、アニメには向かないんです。3本分の設定は相当なボリュームになりますし、世代が変わればキャラクター設定もキャストさんのことも考えないといけない。普通は避ける企画ですが、そういう理由があるにもかかわらずやろうという姿勢は、挑戦としてもやりがいがあるなと感じました。
――ガンダムは歴史ある作品だけに、慎重にいかなければならない部分もありますよね。
山口:ファーストは、低年齢層向けではないところから始まっていましたよね。そう考えると、ファーストが排していたものに、少し戻る部分もあると思うんです。ただしガンダムとして最低限押さえていかないといけないもの、戦争や世界観、群像劇といったキーワードをフォローしたうえで、新しい遺伝子を組み込んでいく。
――3人の主人公という点も、かつてないチャレンジですね。
山口:これも日野さんの企画に、ベースとなるキャラクターが提示されていました。3人の主人公の個性が、そのままパートごとの個性だと言えます。3つの異なる価値基準が、どうやってひとつに結びつくのか。それは作品の大きなテーマといえますね。
――キャラクターが同一作品内で年齢を重ねる、という点は、むしろリアルと言えますね。
山口:そうですね。少年フリットがお父さんになったり、おじいちゃんになったりするのは、ファンにとっては悲しいかもしれませんが、それも人生ですからね。世代が変わる構成のポイントとして、キャラクターの行く末が気になると思います。そういう意味でも、1作で3倍密度の濃い作品と考えてもらえると、かなり楽しめると思います。
――キャラクターデザインもかなり話題になりましたが、印象をお聞かせください。
山口:正直、「やった!」って思いました。もうちょっと大人びた路線という意見もあったんですが、自分としてはこのデザインでなければ意味がないと思ったんです。キャラクターが記号で構わないんですよ。逆に演技や表現の幅は広がりますから。
――親しみやすいキャラクターで戦争を描く難しさはありますか?
山口:それはないですね。むしろ「AGE」のキャラクターデザインがあるから、こういう演技もできるんだと思ってほしいですね。
――キャラクターと同様に、MSも挑戦的な試みがなされました。
山口:1作品に複数のガンダムが必要であるということは大前提なのですが、ガンダム軍団にはしたくなかったんですね。そこから3世代と進化というテーマで、主役のガンダムは1機だけど、姿は変わるというAGEシステムになりました。
――現在、AGE-1ノーマルと2機のバリエーションが公開されています。
山口:AGE-1はシンプルですけど、ウェアーを変えるっていうことにしているんですが、コアはそのままでガラッと違った印象になる。これも海老川(兼武)さんが本当にいい感じでアイデアを出してくれました。オールマイティ、パワー、スピードというバランスは個人的に燃えるので、ぜひ描いてみたいところでした。
――敵勢力のUEに関しても、魅力的なデザインが公開されました。
山口:ガンダムが進化という方向性であることに対して、UEも変化を遂げていく予定です。そのアイデアは現在進行形で煮詰めている最中なのですが、あまりデコレーションしすぎないように方向性を探っている段階です。
――メカアクションについて、めざしている方向性はありますか?
デザインとも関係してくるんですけど、ガンダム対怪獣的な、異種格闘技戦のおもしろさを再現できたらなと思っています。メカ作画の大塚(健)さんを筆頭に、熟練のスタッフにお任せしつつ、とにかく派手なインフレ的な表現はなるべく避けたいなと思っています。光りすぎたり、速すぎたりっていう表現は抑えつつ、どうやってパワーアップを表現するのか。そこはいちばん悩んでいるところでもあります。
――監督的にはどんな気持ちで作品づくりに取り組んでいますか?
山口:今回、第1話のテーマとして、気負いすぎないようにしているんです。特定の話数だけ突出しているのではなく、全体的に高いバランスにできれば理想的ですね。
――最後にファンの方へメッセージをお願いします。
山口:今までにないガンダムをお見せできることは確かです。とにかく、一度見たら次も見たくなるような作品になると思いますので、ぜひ見てください!
▽ストーリー/シリーズ構成・日野晃博
――「ガンダムAGE」に参加されたきっかけを教えてください。
日野:ゲーム業界のつながりとして、バンダイナムコゲームスの鵜之澤(伸)さんとお会いする機会がありまして、そこで軽くオファーをいただいたんです。僕がガンダムの大ファンということもあって「ガンダムで100万本売れるゲームはできないだろうか」と。ですがガンダムのゲームは、すでに多くのタイトルが発売されていて、なかなか差別化が難しい。そこでアニメを含めた企画だったら、今までになかったものができるんじゃないかと思ったんです。
――ガンダムという作品には、どんな印象をもっていましたか?
日野:僕が送り出したゲームの印象から、「ガンダムを知らない人がガンダムに参加した」っていう印象を受けた方も多かったようですが……、実はかなりのガンダムファンです!
――実際に企画はどのような方向性で進められたのでしょうか?
日野:鵜之澤さんからサンライズのプロデューサーをご紹介いただいて、「新しいガンダムに何が必要なのか?」という点で意見が合致したんです。現在はガンダムファンの年齢層が上がっていて、僕らのようなファースト世代のほか、「SEED」世代のファンもほとんどが20代です。そこでもっと幅広い層のファン、子供から大人まで支持されるガンダムが必要なんじゃないかと。
――企画の初期段階から、現在の3世代の物語だったのでしょうか?
日野:そうです。僕は大河ドラマが好きなんですが、ひとりの人生を、子供から大人まで描く物語は、大きな感動を生むんですね。それをガンダムでやってみたら、どうなるだろうと思ったんです。
――3人の人生が描かれるわけですから、相当な冒険と感じられますね。
日野:僕も企画書を書いた時点では、本当に実現できるのか不安ではありました。単純に設定も3倍になるし、年齢を重ねることでまた設定が変わりますからね。ただ背負っているものの違う3人が、それぞれ戦争をどのようにとらえるかっていう視点は、非常に興味深いと思うんです。
――キャラクターデザインの方向性に関して、リクエストは?
日野:最初に企画を立てた段階では、僕と「イナズマイレブン」をいっしょにつくった長野(拓造)が原案を書いたんですけど、あまりクールになりすぎず、子供たちや幅広い世代に親しまれるようなタッチを意識していました。原案は設定画よりもさらにポップな感じです。そこからかなりバランスが取れた感じになってきましたね。
――企画書にはガンダムのデザインも描かれていたんでしょうか?
日野:そうですね。現在のAGE-1とは違う形で、「00」などのデザインの進化軸上にあるようなものを提案してみたんです。ただ新しい世代のガンダムを始めるという意味で、ファースト的な意匠を取り入れたAGE-1は正解だと思っていますし、かなり気に入っています。AGE-2が発表されたとき、AGE-1の意図を感じてもらえると思います。
――MSとしてのガンダムを、どのように描きたいと考えましたか?
日野:ガンダムを1機にしたいっていう気持ちはありました。ガンダムがたくさん登場する作品もおもしろいと思うんですが、もう少しガンダムのヒーロー感を上げたいと思ったんです。そのうえで多様性をもたせたいと考えたとき、導き出されたのが、進化するAGEシステムです。戦闘経験を積んで、自分の設計図を自分で引き直すガンダム。ひとつのガンダムに複数のフォームがあり、さらにAGE-1から2、3に遺伝子は受け継がれ、進化していく。
――現在発表されているスパローとタイタスも、大きな衝撃でした。
日野:この2形態は正直、とても驚きました。さらにシナリオでの描かれ方を見たとき、これは「おもしろくなる!」っていう手ごたえを感じたんです。
――山口晋監督の印象をお聞かせください。
日野:普通、監督さんって、自己主張の強い方っていうイメージがあるんですけど、山口監督のような柔らかい印象の監督さんは初めてですね。とてもフランクだし、人のもっているものをしっかり取り込んで生かそうとしてくれる。その柔軟な姿勢は、新しいモノをつくれる人だなという印象を受けました。
――現在、作業はどの段階ですか?
日野:先日、第1話と第2話の収録に立ち会ったんですが、大きな手ごたえを感じました。みんなが感じたのは、すごくガンダムだったなと。新しい要素がありながら、熱い盛り上がりがあり、感情軸もわかりやすい。
――最後にファンの方へメッセージをお願いします。
日野:新しいガンダムをつくるうえで、ガンダムという個性をもう一度考え直したんです。そこでガンダムがもっている守らなければいけない遺伝子と、つくり変えて新しい世代に向けて表現をしないといけない部分があるということに気づきました。「AGE」は、その両方がかみ合った作品になるという確信があります。今、不安を抱かれている方は、第1話、第2話を見ていただければ、「AGE」という作品の印象が大きく変わると思います。ぜひ実際に作品を見て、そのうえでどう感じるかを決めてほしいなと思いますね。
※2人合わせて計4ページにわたるロングインタビューなので、ざっくり1/3程度に要約しました。元記事をお読みになりたい方は、月刊ニュータイプ2011年10月号をお求めください。