だが,通常のパイロットが使用する場合にはリミッターが必要となってしまった。本機は,"かつてニュータイプと呼ばれたようなパイロットでなければ本来のポテンシャルを引き出せないであろう超高性能な機体"となっていた。よって,搭乗したパイロットがF91の最大稼働に対応可能かを判定するため,バイオマトリクスで構成されるバイオ・コンピューターが採用された。機体が最大稼働を必要としていることが確認されると機体の設定モードが変更され,各部の冷却が始まる。運動の過負荷による機体ダメージの軽減に加え,バイオ・コンピューターを冷却するためである。特に宇宙空間では,大気圏内のように放熱ができないので,頭部は冷却触媒を排出するため,フェイスガードが両頬に収納されエアダクトが露出する。それに伴い,金属剥離効果「MEPE(Metal Peel off Effect)」が起こる。これは,MCA構造の副産物で,ラジエーターや触媒だけでなく,装甲そのものに放熱を行わせる機構である。装甲の最外装が蒸散するように剥離し機体から熱を奪う際に,機体機動の慣性方向に機体の輪郭と熱量,質量を持つ残像が発生する。この残像は,主な材質が金属粒子であるため,レーダーなどセンサー類やパイロットの肉眼を欺瞞する。最大稼働時のF91があたかも"分身"したかのように見えるのはそのためである。