月刊アニメディア2010年9月号 GUNDAM SPECIAL ガンダム浪漫飛行 ~メカ・パイロット・美少女に魅せられて~ 「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」池谷浩臣プロデューサーインタビュー 要約版
http://randal.blog91.fc2.com/blog-entry-1239.html
池谷浩臣プロデューサーインタビュー (1)
――これまで本誌では、劇場版へ臨むガンダムマイスターを紹介してきた。彼らのドラマが作品の主軸であることは間違いない。だが、主役を輝かせる名脇役の存在も忘れてはならない。「ガンダム」世界の名脇役は、主人公とモビルスーツ(MS)戦を展開するライバルパイロット。パイロット同士が織りなす人間ドラマが、「ガンダム」のバトルにおける浪漫だ。
特にここで紹介する4人のパイロットは、手強いだけでなく何らかの「覚悟」を胸に秘めて行動する者ばかりだ。
池谷:パトリックは、2年後の世界でもTVシリーズとあまり変わらないですね。
――と苦笑するのは、池谷浩臣プロデューサー。パトリック・コーラサワーは軟派な雰囲気を漂わせているが、カティ・マネキンへの愛は真剣。セカンドシーズンの最終決戦では、自機を盾にしてカティの輸送艦を狙う敵の体当たり攻撃を防いでいる。命がけで愛を貫く覚悟がある男だ。
池谷:グラハムやアンドレイは、方向性や種類は違いますが、劇場版までの2年間は、地球連邦に所属し、軍人としてのある種の覚悟を持って生きてきたのではないかと思います。
――武士道に心酔するグラハム・エーカーは、正々堂々と剣を交わすことを信条としていた男。刹那との一騎打ちに敗れたときは、ある意味では自刃するより勇気が必要な、恥をさらしても「生きるために戦う」道を進むという決意をした。
一方、アンドレイ・スミルノフは、誤解から父親のセルゲイを殺害する過ちを犯した青年。真実を知った彼はひどく後悔し、最終話では父と母が目指した理想の軍人として生きる覚悟を決めている。
池谷:デカルトは、ほかの軍人たちとは違う感じでしょうか。特に何か期するものがあるような気がしますね。
――新たなイノベイターであるデカルト・シャーマンが刹那たちのライバルになるのかは不明だが、特報映像には「行きますよ。イノベイターの実力を知りたいんじゃないですか?」というセリフがある。特異性を自覚する彼は、イノベイターとして戦いに臨む覚悟を決めているようだ。
そんな個性的な4人だが、かと言って彼らが劇場版で再びソレスタルビーイングの前に立ちはだかるとはかぎらない。TVシリーズで軌道エレベーターが崩壊したブレイク・ピラー事件のときは、すべてのMSパイロットが団結して落下する破片を迎撃。パトリックは、カティと共にクーデター軍へ参加した際、立場上ソレスタルビーイングと共闘している。
池谷:共通の敵対勢力が現れたときは、共闘せざるをえないでしょう。だとしても、ライバル同士が同じ艦に乗って……というところまで行けるかどうかですが。
――相手を本気で葬り去ろうとする憎むべき敵。切磋琢磨して互いを高め合う好敵手。ライバルのタイプにもいろいろある。劇場版で活躍するであろう4人は、どんなライバルとして現れるのだろうか? マイスターに負けない勇姿を見せてくれ。
池谷浩臣プロデューサーコメント
パトリック・コーラサワー
パトリックも劇場版では頑張っています。男らしい彼も見られるかもしれません(笑)。
グラハム・エーカー
グラハムは、これまでどおりの独自性の強い彼らしいやり方で戦いに参加します。
デカルト・シャーマン
ガデラーザはイノベイターでないと扱えない大型で強力な兵器。この機体を操るシーンで、存分に彼の活躍が見られます。
アンドレイ・スミルノフ
軍人というものに対する思いは人一倍強い彼なので、より軍人たらんとしていますね。
池谷浩臣プロデューサーインタビュー (2)
――TVシリーズで刹那たちソレスタルビーイングが目指したのは、戦争の根絶でした。TVシリーズ最終話では世界は平和に向かって歩み始めたようですが、劇場版の世界で彼らが目指すものは何なのでしょうか?
池谷:劇場版はTVシリーズの2年後を描きますが、その世界観はTVシリーズを継続したものです。ソレスタルビーイングの理念も続いています。セカンドシーズンの最後で地球連邦は新大統領の下に新政府が樹立され、融和政策を打ち出しています。2年というのは、政策が世界に浸透していくのに必要であろう期間ですね。世界が平和であり続ければソレスタルビーイングの出番はないのですが、彼らは存在し、世界を見続けています。世界というのは、いつ誰かが争いを引き起こしてしまうかわからないものなのかもしれません。刹那たちが2年間どういう活動をしてきたかは、見どころのひとつです。
――2年間の行動が描かれるのですか?
池谷:2年間をつぶさに描くのは無理なので「こんなことをやってきたんだろうな」ということが、雰囲気で伝わるようになっています。
――刹那はどんな2年間だったのでしょう?
池谷:セカンドシーズンの最後で言っていた言葉どおりにソレスタルビーイングであり続けました。刹那らしくという感じでしょうか(笑)。
――刹那はソレスタルビーイングの大黒柱的な存在になっているのですか?
池谷:イノベイターになって以降、能力的にも抜きん出ているので、柱になっていると思います。刹那が率先してという感じではないかもしれませんが。
――意識体になってヴェーダで眠るティエリアが復帰するのもファンには嬉しい限りです。
池谷:彼がなぜ再び実体化して登場するのか、どうやってヴェーダから出てくるのか、という点も面白いところですね。
――地上で巡礼の旅をしていたアレルヤもピーリスと一緒に帰ってきますね。
池谷:超兵も特殊な存在ではあるので、一般人の生活に溶け込めない部分があったのかもしれません。ほぼふたりきりの旅の中で何か答えが見つかったかどうかは、本編で確認していただくほうがよいのかなと思います。
――メカニックで注目すべきポイントは?
池谷:密度の高さなども含めて、すべて劇場版仕様になっています。各デザイナーには、ギアを入れ直してデザインしていただけたようです。メカ戦はTVシリーズ後半から熱くやってきたので、高いテンションを保ちながら取り組んでいるところです。現在公開中の予告編カットを見て、感じてもらえているのではないでしょうか。
――戦いの舞台もTVシリーズを継続していると思っていいのですか?
池谷:TVシリーズは、軌道エレベーターを中心とした地球圏エリアでの戦闘でしたね。劇場版では、そこを飛び越えて、もうちょっと広くなりそうですね。
――マイスターたちの注目ポイントは?
池谷:劇場版で導き出されるであろうそれぞれの答えが見どころじゃないですか。シリーズを通して語られてきた刹那たちが、どういう答えを出すのかをぜひ見てほしいです。
――女性キャラの活躍どころはありそう?
池谷:マリナは、ソレスタルビーイングとは違うアプローチで、平和を目指すという彼女らしい立場での活動を継続しています。プトレマイオスも活躍するので、スメラギ、フェルト、ミレイナもきっちり描かれますし、ピーリスはアレルヤと一緒に戦います。
――では、劇場版の一番の注目ポイントは?
池谷:刹那たちが立ち向かう敵の存在とは何か?でしょうか? 答えは本編を見ていただくしかありません。それとともに刹那たちの物語の結末を感じてもらいたいです。手前みそですが、いいと思います。
――最後に「ガンダム」の浪漫とは?
池谷:数多くのキャラクターが織りなす群像劇が作品の大きな要素であると思います。個人的にはモビルスーツのカッコよさ。量産型という単語を「機動戦士ガンダム」で教わりましたが、そうしたメカを基にしたリアリズムも面白さのひとつではないでしょうか。そのエッセンスは本作にも入っています。