http://cyanglass.hatenablog.com/entry/2015/06/26/163845
今回はこの中から、「1.形部一平氏によるG-レコ宇宙編の機体解説」について、覚書を残しておきたいと思います。G-レコで一番多くのMSデザインを手がけた、形部一平氏による機体解説は、前回の研究会に引きつづき、聞きどころ満載でした。
なお、手元のメモや記憶が頼りですので、正確ではない部分もあるかと思います。その点はご了承くださいませ。それでは、しばらくのお付き合い願います。
ガイトラッシュ 初期稿
・マンマシーンをたくさん出した時代の一機。
・クラゲのようなビームマントは、メガファウナの“魚のヒレ”のようなデザインを拾った。
・山根さんのデザインが既にたくさん出ていた時期だったので、それを拾って広がりが出ればいいなと。
・「水中用のモビルスーツを宇宙で飛ばしたかった」
・「宇宙空間で引き画になった時に、点灯しているところがクラゲみたいに見えるといいな、と」
画像のデザイナーコメントより
・ビームを屈折できるが、フォトンバッテリーで4分30秒しか展開できない。
・メガファウナを開発したアメリアが作ったMM。クラゲのような光学迷彩を展開し、敵陣の中心に飛び込んで大量のミサイルを撃ち込む。
ジット団の3機
・クン、ロキ、チッカラの3機の初期稿。(このころ、搭乗者はキアムベッキではなかったようですね。
・真ん中の機体はGルシファーの原型で、顔はガンダムタイプ
・おおまかなデザインはこの頃から変わっていない。ジャスティマとルシファーは機体ごとに解説があった。
G-ルシファー
・モノアイタイプとガンダムタイプを提案し、モノアイが採用された。
・「G-セルフをやっつけるための強い敵として描いた→まさか味方になるとは思っていなかった」
画像のデザイナーコメントより
ガンダムタイプではないバージョン。タイツとブーツ、白いドレスをイメージ。こちらもドレス部分が三体のファンネルとして運用される。本体部分をもう少し太らせたデザインにして、外装甲をパージすることで、中からガンダムタイプのマンマシンが出現する、という方向性も。
ジャイオーン
・他のMSにイロモノが多かったので、最初は正統派のガンダムタイプとしてマッチョなデザインだった。基本のラインはガンダム(RX-78)をなぞって、アンテナも後方になびくものでなく、普通のV字アンテナだった。が、監督に修正指示を出された。
・青いジャイオーン稿ではキア隊長が乗ることになって、あとはクリンナップ、というところまで進んでいた。そこに監督からの顔修正が来た。「僕はガンダムタイプにしたかったので」折衷案でモニターをガンダム顔にした。
・設定が進む中でクリムの色が青に決まっていたので、青をやめて、当時白色だったダハックと色を差し替えた。
ジャスティマ
・G-セルフのデザインラインが金星にもあるようにしたかった。G-セルフを思わせる意匠を組み込んだ。
・安田氏から「ゴジラのヒレみたいなのつけよう」と提案があり、エネルギーを大量に使う際に光る設定を取り入れた。
カバカーリー
・元々は、トワサンガ用の量産MSとしてリジットとセットで描いたものを、ラスボス用に手直しした。
・脚のシールドを取ったり、マントをつけたりした時期もあった。
・富野監督の指示で脚シールドを外したが、大気圏突入のコンテ段階で監督が脚シールドを戻した。
・「対空防御が強くて、“天の人”なイメージが(制空権を担う)キャピタルより性能がいいのがわかりやすくて面白いと思う」と安田氏。
ダーマとダハック
・ダーマはダハックとセットで、ラスボス案として提出した。
・「ラスボスなので白いやつ」
・管理者権限でバッテリーを止められる能力を持ち、これならG-セルフを倒せるだろうと考えた。
・しかし、「僕としてはG-セルフを倒そうと、どんどん怪人を送り込んだのに、ほだされて次々味方に(笑)」
前回の研究会後、帰りの電車で安田氏が形部氏に話したこと
・安田氏「ガンダムはエヴァも取り込んでいかないとだめだと思う。ガンダムはすべてのロボットを取り込むべき」
・「ターンエーのマヒローは人工筋肉を持っているので、生体ガンダムがあってもいいかな、と」
・「Zはマクロスを見て、これからは変形だ…って富野監督が言ってたらしいし(笑)」
マズラスター
・ビームをムチに流してリールから打ち出して自由に攻撃できたら、と思った。
・「顔が半分違うのをやりたかった」「イデオンの走査線が大好きなので」
画像のデザイナーコメントより
2本のムチの表面にビーム膜をまとい、敵を分断する。また、体の周囲で回転させることで敵のビームをはじくバリアとしての用途もある。
コンキュデベヌス
・月を防御する巨大なMAとして考案。ユグドラシルとセットで盾と矛のつもりだった。
・貝をイメージしてデザインした。絵画「ヴィーナスの誕生」を思い出して、そういえば貝に乗ってたな→名前は「ヴィーナスの貝」にしよう→仏語のconque de Vénusをローマ字読みした。
監督に見せることを考えると
「名前を書くべきかちょっと悩みますよね」「そうそう。監督のネーミングセンスって独特だから」「(最初から設定を作りすぎると)こんなの書いてきちゃって、とか言われちゃいますよね」コンキデのオーヴンなど、形部さんは素直なネーミングだから監督もダメだししないのかも、というお話も。
ユグドラシル
・デザインを提出した時の「“これは使われないだろうな”っていう(その場にいた)皆さんの顔をよく覚えてます(笑)」
・ネーミングは、でかい木かぁ→世界樹→お、ユグドラシルか。これでいこうと発想した。
・しかし、ちょうど放送していた『仮面ライダー鎧武』でユグドラシルという研究機関が登場してバッティング→「ちょっと読み方変えて、イィグドゥラシルとかにしません?」と提案したが、そのまま変わらなかった。
リジット
・カバカーリーと白黒のセットで提出した
・小形P「マラサイっぽいよね」形部氏「マラサイ好きなんですよ」
・肩付け根の斜めスリットがフォトンバランサーになっていて、量産型だけど実は性能がいい→小形P「本編ではやられ役でしたけど」形部氏「まぁ、(本編が)あの密度だと仕方ないかな、と」
発射台
・エルフブルなどの機体にはランディングギアをつけてたんですけど、富野監督が「今回は飛ばすことにした」と仰って、発射台を作ることになりました。
ハロビー
・監督「新しいハロがほしい」→吉田氏・コヤマ氏「いやぁ、ハロのデザインはあれで完成してるし、ちょっと…」→監督「ほら、すごいだろ」という流れで監督がハロビーのモックを作ってきた(過去のガンダムエース記事にモック写真の掲載あり)
・コヤマ氏「もうすごすぎて、写真バシャバシャ撮りましたよね。でも、さすがにこれはやばいだろ、つって、形部さんがデザインを」形部氏「いやぁ、そこまでじゃないですけど。デザインはやらしてもらいました」
・富野監督のモックにはアンテナとキルスイッチがあって、アンテナは最後まで残った。キルスイッチは、「殺すと止まる」ものらしい。
デザインをたくさん出して
・形部氏「ノリでガッと描いたものを採用してもらってから、デザインを整えるのが大変でしたね。でも、ラフを描くのは楽しくて好きです」
・小形P「富野作品は特別ですか?他と何か違いますか?」形部氏「富野監督の作品は何か違いますね。うまく説明できないけど…クラブ活動感があるというか」安田氏「ありますねぇ。全工程がコンペみたいな」
形部氏「普通、誰が何をデザインするかという発注があって、それに沿ってそれだけをデザインするけど、Gレコは最後までどうなるかわからずに、とにかくラフを描いてました」
コヤマ氏「安田さん、形部さんは突破力がある。G-セルフの決めの一手と形部さんの物量はでかかった」「形部さんが猛烈な勢いでどんどん出してきて、でも使われないだろうと思っていた」形部氏「ある日、これは全部使うから、っていう宣言がありましたね」